2013年渡辺ゼミ卒業の洞口苗子さん(旧姓渡辺苗子)が「第11回JIA東北住宅大賞」を受賞しました。


洞口苗子さん(旧姓渡辺苗子)は、第9回大江宏賞の受賞者で、ご主人の洞口文人さんは第8回大江宏賞のファイナリストに選ばれています。
今回受賞した住宅は、築60年の古民家を取得され、リノベーションを施したものです。ご夫婦の住まいであり、設計事務所が含まれ、母上の美容室が増築されています。

この住宅の解説を洞口さんに書いていただきました。


【複合古民家実験住宅-TateshitaCommon-】

この住宅は施主でもある設計者の、昔ながらの日本家屋を現代のライフスタイルに適したかたちに読み替えながら次世代に繋いでゆきたい−という思いから始まった実験住宅である。岩沼市館下にて築60年の古家を二世帯住宅と設計事務所へリノベーションし、店舗部分として施主母の美容室を増築した。

【魅力的な木組架構を次世代へ住み継ぐ】

評価額ゼロ円の古家を購入した一番の理由は、魅力的な木組架構である。屋根裏のスペースからチラッと見えた、曲がりくねった木の梁架構。現代のハウスメーカーなどでは決してできない大工の技術が活きた空間はまさしく地域資源であり、次世代まで住み継いでいきたいものであった。

【住み継ぐための選択 ? 防水/断熱/耐震による長寿命化】

もともとは瓦屋根+土壁+木製建具の昔ながらの日本家屋。魅力的な木組み架構であっても、断熱性・気密性が極めて低く、健康に暮らすことはできない。また、瓦屋根は重く雨漏りもあったため、このまま断熱しても断熱材やそもそもの木架構を傷める可能性があった。

そこで、屋根は瓦を下ろして断熱、防水。板金葺きとすることで軽量化。壁面には耐震筋交いを設けた。また、既存土壁の利点である調湿性や熱容量を最大限活かすために土壁の解体は最小限に抑え、断熱は外断熱とした。

また、今後ビオソーラーを用いた集熱システム開発のため、実験的にパネルを設置するモデルハウスともなる予定である。

【「土壁ワークショップ」による教育と連携した施工】

土壁の施工にあたり、学生やリノベーションに興味のある社会人を対象にした「土壁ワークショップ」を全4回開催。山形の原田左官工業所 原田正志さんを講師に招き、施工のプロセスを教育として還元することで、地元学生が職人と触れ合う機会となった。体験した学生の中には、このワークショップがきっかけで左官を職にしたいという学生もいた。

【周辺環境との呼応 - 緑道/都市公園と一体化したコモンスペースへ】

敷地は市の都市公園である丸沼緑道に面しており、緑道は車が通らないため、小学生の通学路、市民の散歩道として、日常的に利用されている。緑道に面した庭は、民地型公園(コモンスペース)-TateshitaCommon-として、今後、ストリートファニチャーの設置や野外映画祭の開催など、市民に開かれる様々な仕掛けをしていきたいと考えている。

【二世帯住宅としての動線計画】

既存の住宅を生かしながら、二世帯住宅+美容室が可能となるように動線に配慮した。キッチンは2か所設置し、浴室のみ共有する形で動線を確保した。