no.176

庭の思い出
2025年2月  

相原 恵一(1988年 大江新ゼミ卒業)


 新卒で大手住宅メーカーに就職した。
最初は工事担当として、現場の管理とお客様の窓口で業務。その後、設計へ異動して、お客様と間取の打ち合わせなどを主に行っていた。また、それ以外にもスタッフ業務など、多くの業務を経験させていただいた。
そして今、あと数か月で還暦になろうとしている。
直近の5年間は、外構部門に異動し外構のお打合せを行ってきた。
このように、戸建て住宅を中心に多くのお客様と打ち合わせをしてきたが、実を言うと自分自身は横浜の団地に生まれ育ち、その後もアパート、会社の集合寮、そして自宅もマンションと、戸建て住宅に住んだ事がないのである。
戸建て住宅に住んだことが無いくせに、人様の外構の設計をしているなんて、サッカー経験がないのにサッカーの監督をするようなものか?

そんな自分が外構の打ち合わせを行っていると、良く言われる言葉がある。

「植栽はいらない」である。

理由は「手間がかかるから」とか「虫がつくから」
団地育ちで庭木を自分で育てた事もないくせに言えたセリフじゃないが、でも折角戸建てを建てるのに、植栽無しなんて…
いちごの無いショートケーキみたいじゃないか…
いや、打ちっぱなしのRCが無い、安藤建築のようなものか…

誰でも古い曲を聴くと、その時代の記憶が鮮明に思い出されるように、子供のころの記憶には身近にあった緑を五感で感じた記憶と共に残るものだと、私は体験的に感じている。
桜の花びらが舞い散った道路の映像や、雪が降り積もった時の木々の様子(視覚)。
芝刈り後の草の香り(嗅覚)。
学校帰りにツツジの花びらを吸った時の蜜の甘み(味覚)。
木登りをした時の枝のしなりや、芝生でサッカーの滑り込みをした時の膝の痛み(触覚)。
そして、風が吹いた時の木々のざわめき(聴覚)などなど。

もちろん子供の頃は、全く植栽の事なんて意識はしていなかったが、このような体験は体に染みついており、おじさんになった今だからこそ、それらの体験の豊かさを改めて感じるのだ。
そんな身近にある自然を感じる環境を整えてあげる事も、四季の変化が豊かな日本で暮らす、大人の一つの役割なのではないだろうか。





 

家の前の芝生と桜

鯉や亀がいた池

子供のころ遊んだ公園周辺
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
[プロフィール]    
 
相原 恵一 1988年卒業 大江新ゼミ

   
1965年 生まれ 横浜市出身
1988年 旭化成ホームズ(株)
2020年 AJEX(株)
2024年 旭化成ホームズコンストラクション(株)