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第21回を迎えた大江宏賞公開講評審査会は、2025年3月15日(土)法政大学市谷田町校舎5階マルチメディアホールにて開催されました。今年度より大江宏賞の運営は法匠会(建築同窓会)から建築学科教室に移管されました。 今年度修士設計の指導にあたられた西沢大良大学院客員教授を審査員長とし、外部の特別審査員2名と卒業生審査員2名の計5名で講評審査にあたりました。総合進行は安藤直見教授が担当されました。 学生は、修士設計学内審査から選ばれた8名がエントリーしました。個々の10分の発表・10分の質疑応答ののち、場外廊下でのフリーなパネルセッション、さらに全体質疑・議論を経て最後に審査員5名による投票が行われました。どの案も甲乙つけがたく、1度の投票では決定できず3度にわたる議論と投票の結果最優秀賞が決定しました。 湘南海岸を対象として、砂浜という変化し続ける環境と建築との動的な関係性に着目した森本爽平さん。西荻の狭小道路に面した店舗を道路に対して減築の手法で軒下空間を作り、襞の多い空間によって人々の滞在と動きを作り出そうとした浅日栄輝さん。少しずつ町工場がマンションに変わって行く、都市の中の準工業地域でコアとしてのスケルトンに自由に機能を追加して行くことでいつまでも変化し続ける工場建築を提案した松本信也さん。本郷台地の襞の多い複雑な地形に注目して、資本主義の求める秩序や同一性から逃れるような逃走線を設定して新しい都市における住まい方を提案した宮澤諒さん。都市近郊の失われつつある田園風景の中、設定されたフットパスを巡ることによって残された梨園を利用して住民のコミュニケーションを図る施設を提案した福田美里さん、かってメルヘンな観光地としてにぎわって今ではほとんど廃墟となった町を、新しい用途にコンバージョンすることで過去の遺産を生かして継続する道を提案した樋口詩織さん、故郷の集落を舞台に、祭りと大地の持つ力、四季の移ろいを建築に落とし込んだ飯尾龍也さん、秩父のロングトレイルを歩くことで土地と対話するように各施設を計画した齋藤詩織さん、8名のエントリー者による熱のこもったプレゼンテーションと質疑応答が繰り広げられました。 審査員による投票の結果、最初に松本さん、宮澤さん、斎藤さんの3名が残りましたが、2回目の投票で松本さんと斎藤さんが選ばれ、決選投票において見事齋藤詩織さんが本年度の大江宏賞を受賞しました。斎藤さんの案は秩父の自然に深く寄り添いながらも、自立する建築としてのデザイン性と両立しているところを高く評価されました。 なお、この日の8名の候補者は発表順に以下の通りでした。 1. 森本 爽平/モリモト ソウヘイ (赤松研究室) 「浜としての環境、状態としての建築」 2. 浅日 栄輝/アサヒ エイキ(山道研究室) 「軒について―中間領域の在り方の研究―」 3. 松本 真也/マツモト シンヤ(山道研究室) 「つくりゆくこと―都心型準工業地域におけるものづくり中心の街区再編―」 4. 宮澤 諒/ミヤザワ リョウ(赤松研究室) 「襞上の透明なイエ―現代都市に集まって住まうことについて―」 5. 福田 美里/フクダ ミサト(小堀研究室) 「歩くことから始める郊外住宅地の再考」 6. 樋口 詩織/ヒグチ シオリ(小堀研究室) 「描いた夢想、かたちを実らす―メルヘンきよさと再生ものがたり」 7. 飯尾 龍也/イイオ タツヤ(小堀研究室) 「地球と建築」 8.齋藤 詩織/サイトウ シオリ(赤松研究室) 「ペリパテティックの観測図」
審査員: 審査委員長 西沢 大良 (西沢大良建築設計事務所/芝浦工業大学教授) 特別審査員 坂牛 卓 (O.F.D.A associates/東京理科大学教授) 渡辺 真理 (設計組織ADH/法政大学名誉教授) 卒業生審査員 吉本 晃一朗 (竹中工務店) 洞口 苗子 (株式会社L・P・D/宮城女子学院大学助教) 講評審査会進行: 安藤 直見 (法政大学教授)
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