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誰もが知っている樹脂でできた赤や黄色のビールケース、よくよく眺めればジツはなかなか興味深い。ハードな使い勝手に耐えられるよういろんな工夫がなされている。細部のカタチはさまざまなれど、しっかり安定して積重ねられるようにできているし、いわゆるリブ構造の要領で強度と軽量化を図り、ビンが直接ぶつからんようにする仕切板は逆梁よろしく底板を支えていたりする。仕切板の形状もビンの出し入れの動作を考慮したような形跡が感じられる。洗浄のしやすさ、樹脂脱型の都合など使われ方作り方の物語が満載のシロモノである。 さて、そこで本題の底板である。ビールケースの底板は、たいがいメッシュ状のアミアミ形状である、なぜか? 3年ほどまえに、この小さな?だけをたよりに無謀にもワークショップをやってみた。参加した学生たちにそのナゼ?をぶつけてみた。最小材料のため、軽量化のため、ケースごと洗浄するため、ケースごと冷やす都合のため、ガラス瓶だから、液体だから、耐久性向上、壊れにくい、弾力がある…などなど。なんとなくのイメージや、設計者が考えたであろうナルホドな理由までいろんな回答が搾り出された。でも、「アミアミが断然いい、アミアミじゃなきゃダメだ」に迫る理由が見当たらない。 ビールケースは四角い。ビンは丸い。20本(4×5)が四角に入れられれば必ず、菱形にスキマが生じる。あたりまえだが密実に充填されることはない。つまり底が見える。底板がアミアミならば、その下の地面が見える!。学生時代、ビール運びを手伝っていて発見する。2段重ねで運べば30kg相当。階段もあれば暗がりもある、足元が不案内なとき、ビンのスキマから足元がチロチロ見えることが俄然わが身を救う。そう、底板がアミアミだと運んでいる足元が見えるわけ。で、助かるわけ。 ナゼ?の正解がこの体験エピソードにあるわけじゃない。ワークショップで学生たちがあげた経済性や構造・材料学的理由のほうが「正しい」気もする。ビールケース設計者がそんなこと理由にしたとも思いにくいし。でももしリデザインの依頼があったら、ほかの要素はさておき、わたしだったら底板だけは躊躇なくアミアミにする、とは思っている。 |
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