no.003 「何処へ」
     1971年卒業 宮脇研究室 山本 純弘
   
 

 自分自身の事務所を始めてから今年で30年になります。思えば随分遠くまで来たものです。

 最近、周りの人達から趣味が変わってきたと言われています。還暦を迎えた時に、思うところがあって、西国三十三ヶ所の観音霊場巡礼をはじめました。半年ほどで廻りきりましたが、その時は廻ることが目的になってしまっていて、内容をあまり記憶していません。これでは意味がないと気が付き、今度は時間を掛けてもう一度ゆっくりと巡礼しようと考えています。

 この巡礼を始めた頃から、社寺仏閣や仏像、日本画、和陶器に興味が湧いてきて、このところは特に仏像巡りも始めています。それを助長するかのように、関西の京都テレビで「仏像大好」と言う番組を見つけました。(既に今は終了していますが)この番組では奈良の様々な仏像を紹介していました。さほど一般的に知られていない寺院でも、とても心打たれる仏像様が数多くいらっしゃいます。昔はそんな気持になることがあるとは思ってもいませんでしたが、確かに趣味が変わってきているのかもしれません。いよいよ玄冬の域に入ってしまったのかな。(今急いで調べてみたら、玄冬は60代後半からだそうで、まだ白秋辺りに辛うじてくっ付いているようです。)

 その他にも、展覧会と言えば日本画、陶器、仏像など、先日はルノアール展にも行ってみたのですが、心惹かれるものを感じませんでした。自分自身でも不思議なくらいです。

 そのような気持が最近依頼された住宅の設計にも如実に現れているようで、ますますディテールを気にするようになり、時間が今まで以上に掛かってしまうようになりました。当然コストにも跳ね返ってきますので、クライアントにも随分とご迷惑をかけているようです。

 

 西国三十三ヶ所観音巡礼の一番札所、青岸渡寺です。和歌山県の那智地方には補陀落渡海と言う風習があり、多くの僧がこの捨身行を行ったとされています。このような事実を知るにつけ、何かもっとやらなければと言う気持になってしまいます。

 
 
 

 

 
[プロフィール]    
山本 純弘
   1971年卒業 宮脇研究室
    卒業後、新日本技術コンサルタント、出江寛建築事務所、アトリエフルタ建築研究所を経て、1981年独立、山本純弘建築研究室設立。
現在、村野藤吾設計の綿業会館に事務所を構えて活躍している。