no.004 「オープンハウスでの収穫」
     1998年修了 大江新研究室 菰田 真志
   
 

 5月末に、独立後初めて設計した「新築」住宅でオープンハウスを開くことが出来ました。オープンハウスをおこなうのも初めての経験です。この住宅は某老舗ネットコンペでとった住宅で、紹介から始まった仕事ではなく、プランを気に入ってもらって決まった記念すべき仕事でした。独立し夫婦で設計事務所をはじめて4年ほどたちましたが新築の仕事になかなか巡り合えず、増改築等では構造的な問題などで理想的な案が実現できず歯痒い思いもしていたので、「新築やりたいね」というのが以前からの我々のささやかな願いでした。そんななかでめぐり合った仕事だったので、出来上がったらオープンハウスは是非やりたいとはじめから思っていたのです。

  オープンハウスに向けての準備は、工事も順調に進んでいたおかげでスムーズでしたが、ひとつ必ず終わらせておかないといけない工事がありました。コレは見積段階で真っ先にはずされた麻縄巻きです(写真)。階段手摺と2連丸柱に化粧で麻縄を巻く仕様だったのですが、見積の時に施工する業種がないという建設会社さんの質問(たしかにもっともな意見です)と、見積もってみると人工代が予想以上にかさんだことから「材料建主支給」で「設計者工事(=無料奉仕)」になっていたものです。麻縄を巻く部分の総量を計算して購入し、オープンハウスの直前に私が巻きました。その量はトータル420M!。以前設計事務所に勤めていた時に全く同じような状況になり、所長の一声で巻いたことがあったので、縄巻きの経験はありましたが、その時は手摺だけでしたのでここまでの量は有りませんでした。結局、丸二日間かかって巻き上げることになりました。

  オープンハウスの当日、設計関係の仲間や法政のOBの方々にも来ていただくことができて、いろいろな感想や意見をお聞きすることができました。普段なかなか他の設計者の方などに自分の設計したものを見てもらい、感想を頂く機会はないものです。(そのなかで縄巻き部分は話のネタのひとつになりました。)初めてのオープンハウスは営業的な部分ではまだまだ生かしきれませんでしたが、オープンハウスをすることで、いろんな方の意見などを聞く機会になったことが一番の収穫でした。

  後日談:オープンハウスが終わってその夜から喉が腫れて咳が止まらず、ひと月以上経った今日も未だ完治していません。

1F:麻縄巻き仕上の対の柱が、空間を穏やかに分節しています。(撮影:新良太)
2F:二股の前面道路に向けて大きな開口が設けられています。スチール手摺の笠木部分も、麻縄巻き仕上です。(撮影:新良太)

 

 
[プロフィール]    
菰田 真志
   1998年修了 大江新研究室
    泉幸輔さんの事務所から独立後、初のオープンハウスを経験され「その体験談を」と忙しい中、エッセイをお願いしました。竣工後、体調をくずされたようですが、現在も複数のプレゼンを抱え奮闘中とのことです。