no.017 「空気を描く」
     1984年卒業 河原ゼミ 中村 守利
   
 

 震災からはや半年が過ぎ政府の対応にいらいらが募りますが、イラストレーター仲間や団体が、震災直後にいち早く義援金のためのオークションを行っていただいたことについて、深く感謝の意を表したいと思います。

  建物を描くことを長くやっておりますが、ちょっとしたこだわりをひとつ。

  昔、修行時代の初めに「ボリューム感が無い」とか「空気が描けてない」と言われ何度も手直しをいたしました。立体を描くには基本中の基本の事ではあります。

  当時は何のことであるかわかりませんでしたが、今は何が最良か迷う毎日です。

  真剣に取り組むと非常に奥が深い代物です。

  簡単な例で説明しますと、マッチ箱を机の上に立てて、斜め下のほうからの輪郭をスッケチします。その輪郭線は、何もしなければマッチ箱か何かわかりません。これが巨大な壁に見えるようにするにはどういった工夫が必要でしょう。この場合、人物や木、車などの点景を入れたり建物の窓を入れたり比較となるものを入れることは無しとします。

  みなさん十人十色、いろいろと思いつくでしょう。

  これは手描きのスケッチやCGはもちろんのこと、模型にでも使えるかもしれません。絵のグレードがひとランク上がること請け合いです。

  さて、何が正解かといいますとみなさんの思いついたことすべてが正解です。

  線画が得意な人は線のタッチで表現するもよし、色が得意であればダビンチ由来の遠近法もよし光のあて方、天候などまで楽しみ方はたくさんあります。

  ようするに、雰囲気といますか、空気が立体感を感じるようにできればよいのです。CGを作るにもスケッチするにも、自分のイメージが無くてはうまくいきません。すべては、頭の中の絵に近づける作業です。

  以上、空気の読めない男が、空気を描く話でした。

 

 
 
 
 
[プロフィール]    
中村 守利
   1984年卒業 河原ゼミ
    1984年卒業 河原ゼミ
福田デザイン、アメリカの修行時代を経て1989年独立
1500点以上建築パースを描くも、いまだ夢はかなわず。
放浪の画家に向かって修業中。