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大学を卒業して7年、気づけば30代に突入し、自分は何をやってきたか、ということを考えるようになった。そこで最近、20代を振り返り30代を明確な目標を持って突き進むという意味で、自叙伝の執筆に取り組んでいる。考えていることを文字に起こすことで、自分自身が何を考え、どんなアイデンティティを持っていて、どんな行動を取るべきかがより明確に見えてくる。とカッコ良く言ってみたが、実際のところは、以前より日記をつけたいと思っていたのだけれど、小学生以来書いたこともなければ、毎日書き続ける自信もない。だったら、ここらで気合を入れていっぺんに振り返ってやろうじゃないか、というだけのことである。 書き始めてみると、大学時代から自身の根本にある想いは変わらないということを実感する。それは、単純に「本当にいいこと、楽しいこと」を実現したいという想いで、学生時代のポートフォリオの冒頭にも謳っているし、未だによくプレゼンで言っていることでもある。そして、それを経済という土俵の上で成立させるべく僕は仕事をしているのだと思う。サスティナビリティやCSRという言葉がようやく社会に定着してきたことは、「本当にいいこと、楽しいこと」が付加価値となり、消費者の選択の決め手となる可能性を示していると考える。 最近いろいろと興味ある事柄の中でも特に「森づくり」に興味がある。これまで植林活動に参加したことはあったが、植える行為というよりは、間伐した国産木材の利用促進について取り組みたいという興味である。語弊を恐れず一言で言うと、間伐した木材の利用が進まなければ、森は育たないという課題があるからだ。直近に取り組んだホテルメッツ渋谷のリニューアル(渋谷駅に直結するビジネスホテル。2010年11月、14階建の13、14階フロアとロビーラウンジをリニューアル)では、森づくりに貢献することをテーマとしたGreen Boxという客室を設えた。Green Boxに宿泊するお客さまの滞在時と移動時に排出するCO2を想定し、森林保全団体と提携しカーボンオフセットを実施。これは日本の森づくりの促進に役立てられる。そして、森を育てるために行う間伐で出た木材を今度は客室の家具として使用する。この一連のサイクルにより、お客さまに利用していただければ利用していただけるほど、森づくりは進むことになる(はずである)。内装では、その表現として植栽を取り入れた。ホテルの客室に生の植栽を入れることはこれまでタブーとされてきたが、実際にはどんよりとした空気が停滞しがちな客室が、ひとたび客室の扉を開ければ、ヒノキのいい香りがお客さまを迎え、新鮮な空気と見た目の心地良さが魅力の空間となったと思う。植栽はロビーラウンジにもふんだんに導入している。このほか、渋谷文化の発信をテーマとし、渋谷を拠点に活動するアーティストに客室1室丸ごとデザインをしてもらったArt Boxという客室も設えた。詳しくは、商店建築2011年10月号で扱って頂いたので、そちらを是非見て頂きたい。結局、何がやりたかったかというと、お客さまに快適な空間を感じていただくことはもちろんだが、Green Boxをきっかけに環境意識の向上や国産間伐材の使用が促進されれば良いし、Art Boxをきっかけにアートカルチャーがより定着し、アーティストがより活動の幅を広げられれば何よりだと考えている。それが一企業としての社会貢献となり、結果、ビジネスとしてお客さまに選択していただくことにつながると考える。 今回紹介した取り組みは、小さな取り組みではあるものの、このように「本当にいいこと、楽しいこと」をコツコツとカタチにしていくことが今の社会に必要であると信じて今後も行動していこうと思う。これが自分自身の30代の行動目標なのかもしれない。 今回、森への興味について書きましたが、明日より、自然とどう向き合うかというテーマで、ジェフリー・バワの建築を体感するためスリランカに行ってきます。カンダラマホテルほかバワの設計したホテルに泊まり、自然に対する想いを深める旅となればと思います。最後に、自叙伝を書いていて、もうひとつ気づいたこと。それは、文章があまりに下手くそであるということ。本稿においても、その下手っぷりを発揮していますが、どうぞ皆様ご容赦ください。
村上 悠
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