建築設計において最も大切なことは「コミュニケーション能力」ではないかと思っています。
大学院を修了して十数年、建築設計を仕事としていますが、これまでの実務経験の中で最も身に付けたいと思った貴重な能力のひとつです。ディテールや納まりは実務経験を積むことで自然に身につくものかもしれませんが、コミュニケーション能力は意識しながらでないと身につくものではないと思います。もともと各個人の資質・性格もあると思いますが、意識してコミュニケーション能力を鍛え、その能力を発揮できる設計者は関係各者に信頼され、いい仕事をしている印象があります。
建築は風景をつくる物質として存在しますが、その建築をつくろうと考えるクライアントも、計画し設計する設計者も、工事をする施工者も全て人です。人と人との関係性を尊重しながらいつも仕事をしています。言うまでもなく、建築を取り巻く環境(自然環境・経済性等)を充分に検討して設計を行うことも重要ですが、設計者は自分の意見だけを一方的に発するのではなく、クライアントの要望を充分に聞き出すために、対話を重ねコミュニケーションを密に取り信頼関係を築くことが、そのプロジェクトを成功させる鍵だと考えています。また、協力事務所や施工者との関係も当然ながら重要で、いい建築をつくるチームとしての関係性を築き同じ方向を向き、それぞれの仕事をしっかりと行えるようにコミュニケーションを図っています。
コミュニケーション能力を活かすことは建築設計に限らず、どんな仕事でも当てはまるような当たり前のことで、日常生活においても同様かもしれませんが、トラブルが起こる理由の多くがコミュニケーション不足によるものであることも確かです。またその一方でコミュニケーションが過ぎると、日常生活においては問題ないことでも、仕事関係の場合は馴れ合いになってしまい問題となることも多々あります。その辺りのバランスの取り方もコミュニケーション能力に左右されるので、デザイン能力と同様つくづくその難しさと大切さを感じています。
余田正徳建築設計事務所
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