no.034

「スイーツを考えた経験から」
     1994年修了 陣内ゼミ 阿部智樹
   
 

 留学経験のある人は、よく「海外で生活すると日本のことがよく解る」というような意見をする。私の周りには多くの海外生活経験者がいて、よくその旨のことを聞かされた。もちろん、諸外国と比べた日本つまり相対的にみた日本が解るという意味だが、本来のフィールドを理解する上で、違うフィールドを知ることが重要という意見であろう。

 私の仕事、本業のフィールドは、多くの同窓生と同じく建物の設計監理(デザイン)。12年前に独立以後、住宅の設計を中心に、店舗設計、家具デザイン、まちづくり等々の仕事をさせていただいたが、建築のフィールド以外のことにも積極的に関わるようにしてきた。

 その中でも面白い体験となったのは、スイーツの計画。右の画像は、上が2006年のフォーマルなパーティーで、下が2012年にカジュアルなパーティーで、実際に提供されたケーキである。基本的にパティシエとのコラボレーションになるため、材料等の味を左右することは考えず、自分の考えている事をケーキを使って可視化する試みを行った。2つのケーキのコンセプトを
簡単に記載する。

・ぐるぐるケーキ
ビュッフェパーティー用のケーキ。デザインされたケーキは、お披露目されると一度裏に運ばれ、切り分けられゲストに提供される事が多い。またビュッフェ形式では、料理の取り方が各個人自由なので、早い時間帯にあまいものを食べたい子供や女性等のゲストもいる。このケーキは、多少食べ進められても全体イメージが崩れない形状をしている。画像は1/3食べ進められた状態。

・Sweetly Town
建築学科の学生とのワークショップで考えたカップケーキ。スイーツがもっている華やかさと幸福感を、まちの模型と統合したらどのようなイメージが浮かび上がってくるかという実験。
図としてのスイーツ vs 地としての建築、一時的なスイーツ vs 持続すべき建築、華やかなスイーツvs 地味な真面目な建築、直感的なスイーツvs 論理的な建築 .....等々。

 コラボレーションで重要なのは、本業でなくてもプロ意識を持って取り組み、建築的な考え方を意識して提案すること。それによって、異業種の相手(パティシエ)とのアイディアの出し方、イメージのつくり方の違いが明確になっていく。こういった異業種との関わりを通じて教えられることは多い。すぐに建築に応用できるものは少ないが、なんとなく考えていたことが整理されたりする。特に一般の人に建築を説明する時に役に立つ経験だと思う。

1/3食べ進められた状態
ぐるぐるケーキのつくり方
Sweetly Town
Sweetly Town
 
[プロフィール]    
阿部智樹
   1994年修了 陣内研究室
   

1994年修了 陣内研究室
1994〜  芹沢金一郎建築設計事務所勤務
2000〜  タステン一級建築士事務所 共同主宰
2005〜  一級建築士事務所タステンアトリエ主宰