no.035

「大江賞から1年たって」
     2012年修了 富永ゼミ 川西 乃里江
   
 

 3月の終わり。例年より早い桜の開花が、春の訪れをつげています。
 法政建築同窓会の皆さんが見てくださるメルマガのエッセイということなので、「大江宏賞(修士設計)」にまつわる昔と今の想いを綴ってみようと思います。(私は、2012年に大学院を卒業しました。感想文になってしまいそうですが、お許しください。)

  クールだけどアツい?
 修士設計と、卒業設計は、意気込みやスタンスがだいぶ違うように思われます。
 修士設計に取り組む多くの人が、「卒業できればいい」というようなことを言います。(というより、絶対大江賞とります!みたいな意気込を口に出す人がいないだけかも知れない。)けれど、その淡白な言葉は自分を守る仮面であって、ほんとは、いろんな気持ちの中で取り組んでいるんだろうなと思っていました。それがよくわかったのは、大江賞審査会後のレセプションで、思わず男泣きした先輩を見て。

 6年間の集大成?
 修士設計にもなると自分のやり方みたいなものがわかってくるので、素晴らしい後輩にも恵まれて、プレゼンテーションとしての作品を完成させることはそれほど大変ではなかったように思いました。(これを後輩がみたら、なんてこと言うんだ!と怒られてしまうかもしれませんね。)
一番の壁は、「坂本先生をうなずかせること」。(修士設計は後期の授業としてカリキュラムに組み込まれていて、それを担当してくださっていたのが坂本一成先生。)坂本先生は、話の筋が通っていなければなかなか前に進ませてくれず(建築が社会性を伴っていなければ意味がないという考えから、法政の学生に多い形から入るということではなく、話の筋道を立てるということが重要視されていた。)その筋道が見えたのが12月中旬…そこから無我夢中になって取り組んだことを覚えています。

  宝ものとなったもの?
 第8回大江宏賞をいただいて、修士設計を苦しみながら楽しんだ体験が、より一層素晴らしい記憶として私の中に刻まれました。
 賞自体はとてもうれしいことですが、私が今になって宝だなと思っているものは、修士設計中にとりためていたボイスメモです。
 大江賞の審査会や講評、そして、日々のエスキスで先生方のアドバイスをとりためたボイスメモは、(その時は備忘録としてとっていたものですが)今聞き返すと、その言葉はどんなときにも(特に、仕事の中で、どこに面白さをみいだせばよいのか分からなくなった時などは)私に元気と勇気を与えてくれるのです。

  このエッセイを書きながら、またそのボイスメモを聞き返しています。

 日々、精進あるのみ!

 
[プロフィール]    
川西 乃里江
   2012年修了 富永ゼミ
   

2012年3月 大学院修了 富永譲研究室
2012年4月〜 鹿島建設
出身 北海道上川郡東川町