岐阜県美濃市とイタリアのアマルフィ市が、2013年5月に文化都市協定を結んだ。アマルフィ市は、美濃と同じく手すき紙文化をもつ町であることから、和紙を共通項として長期的な視野で親交を深めようとする交流事業である。
5月の交流では調印式が中心であったが、12月22日、23日では、紙文化に関するシンポジウム、美濃和紙あかりアート展、手すき和紙の実演、提灯づくりのワークショップが開かれた。
イタリアも、東欧、マグレブ諸国、中国などのアジア圏から大量生産の安価な生活用品が輸入されており、さらに少子化や生活様式の変化によって、伝統工芸品産業は様々な問題を抱えている。
イタリアの伝統工芸というと、靴やバックなどのイタリア皮製品、ジュエリー、カメオ、ヴェネチアグラスなどがある。イタリアも国内需要が減少しているが、逆に海外からのオーダーは増加しているそうだ。
最近、市場調査の依頼を受けて調べていたところ、海外輸出用のみに限って製造するイタリアの革靴職人工房があり驚いた。日本からの機内で知り合った、ナポリの紳士服輸入業を営む日本人男性は、「どんな不景気になっても、イタリアブランドは不動の存在だ。日本では必ず売れ続ける」とはっきり言い切った。
しかし、製品のクオリティを比較すると、日本製品の方が優れていることが多々ある。デザインだって、最近ではイタリア人の方が日本のミニマムなデザインを真似しはじめていることも少なくない。
ならば、イタリアブランドが不滅なのは、クオリティや美しさだけではなく、イタリアという国全体のイメージ、さらにはフィレンツェブランド、ミラノブランドなどといった町のイメージとも重なっているのは間違いないだろう。
素晴らしい伝統技術が残っている町というのは、大概どの国においても、職人を保護し、産業として発達させる財力があった町なので、歴史があり、文化的に豊かな町であることが多い。
アマルフィでのシンポジウムでは、法政大学の陣内秀信教授もパネリストとして参加され、「アマルフィ海岸の地域と都市の構造」というタイトルで講演された。陣内氏のように都市・景観・歴史の視点から発表する専門家だけでなく、産業遺産・製紙技術・紙の利用法などの専門家も参加して、今後の紙文化のあり方が論議された。
欧州での日本の伝統工芸品の販路拡大は大変難しく、これまで失敗に終わった例ばかりだと聞いている。
日本が、イタリアが歩んでいるような、高い付加価値のついた伝統工芸品の海外展開を目指すのなら、モノづくりそのものだけでなく、まちづくりにもさらに力をいれ、日本ブランドとしての都市全体の不動のイメージをつくりだす努力が必要だと痛感した。 |