no.076

自然をつくるという仕事の先に

   

中込亜矢子(1997年卒業 佐々木宏ゼミ)


  植栽が建物と建物の人工的なラインをぼかす、街並みに柔らかい自然なラインを描いてくれる。建築を学ぶ中で海外各地を旅して芽生えたまちつくりに対する考えを、造園の世界で学んだ世界観で伝えてさせて頂きます。

さもそこにあったかのように手を入れる。
建築が0から1をつくることだとしたら、造園では0は0、1は1に。0から1、または1から0にするのは植物自身。自然界の生命力に力添えするのが人の成すこと。

本当は数年程度で建築業界に戻るつもりで門戸叩きましたが、素晴らしい親方に出会い、職人の粋な世界も教えて頂きました。

手入れに入った際の鋏の音、多くてもダメ。少ないときはリズムを刻むように空打ちして風情をつくる。夏場、芝刈りをすれば蒸せるような湿度に草の匂いが加わる。亭主が手入れの音や匂いでその季節を感じるという。目を楽しませる植栽選びは、五感に響く要素を随所に散りばめていく。芽吹きの時期や色、葉の散り方、冬の幹や枝ぶりを計算。枝葉の重なりは1箇所だけではなく回遊した際のシークエンスをも想像しながら配置。365日24時間、タイムプラスのようにシーンを頭の中で早送りしながら、数年後に植物が馴染んでゆく姿までを提案していくのです。0から1をつくらなくても自然が空間を創り出すということを学びました。

話をまちつくりに移りますと、自然にしっくりくるという至極普通の感覚が海外のまちつくりにおいて重要視されているのに対して、日本のまちつくりはシンボル的な存在を擁立し際立たせることに重みをおいているように感じられます。2年半前にまちつくりをうたっている会社に転職をし、造園で培った経験をこれからのまちつくりに活かすという使命を担っての再出発です。

お客様宅で芋虫捕獲の初仕事。住み手にも自然であるということを伝えてゆかなければならないと感じた忘れもしない社会人1日目から、私のまちつくりは続いております。
 
  見えていないものの想像膨らませる空間提案、庭の醍醐味。
 
  生態系と共存していることに気づける貴重な場。
   
 
  植物の生態熟知はローメンテナンスにつながる庭師の腕の見せ所。
形のコントロールが利くバラは実はとても優秀な植材の1つ。
   
 
  自然に身を置くことで五感で得られるものは、一期一会。
   
 
  庭あってこそのウィンドートリートメント。
   
   
   
   
   
   
 
[プロフィール]    
中込亜矢子   1997年卒 佐々木宏ゼミ

    1997年法政大学建築学科卒業(佐々木宏ゼミ)。
造園の設計施工会社に14年勤務。主に個人邸の庭園設計、施工管理に従事。
2013年に株式会社NENGOに転職しオーストラリアのPORTER’S PAINTSの日本総代理店業務担当。