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私が在学中、建築学科はまだ東小金井キャンパスにあった。大学4年生の頃から、中央線の線路の切り替え工事で駅が非常に使いづらかったことを覚えている。その後、私はJR東日本に入社をして、開かずの踏切による渋滞等を解消することを目的として、東京都が線路高架化事業を進めていたことを知った。 三鷹駅から立川駅の間に約9km、約7万uの高架下空間が生まれた。当社は、そのエリア開発を中央ラインモールプロジェクトと名付け「緑×人×街 つながる」というまちづくりのコンセプトを立ち上げた。線路は街を分断するため、中央線は南北で街の構造や住民のコミュニティが異なる駅もある。高架化を契機として、南北がつながる場や機会をつくり、地域の輪を広げることで、より賑わいのある街にしていきたいという意味が込められている。 実現するため、2012年から約2年間「ののわ」というエリアマガジンを地域の方の協力のもと発行した。地域の人や場所の魅力を共有し、暮らし方や働き方を見つめ直すことで、この地域ならではのライフスタイルを探っていき、自分の住む街を好きになってもらうことを目指した。その中で、月に1回程度のペースで小さなワークショップも開催して、少しずつ人と人、人と街の輪を広げていった。 高架下を開発していく上では、街の南北の回遊を促すため、線路と道路の交差部は重要な結節点として捉え、カフェや広場等の人が集まりやすい用途を計画し、緑や照明はより華やかに演出する計画としている。東西の移動のときに高架沿いを楽しく歩いてもらうために「ののみち」という歩道空間も統一して整備をしている。また、駅から街ナカを回遊してもらうため「Suicle」というシェアサイクル事業も始めた。 2012年からこのプロジェクトに携わり、建築する前にその街の人の暮らしや価値観に触れることが重要であることを実感した。ディベロッパーとして仕事をするときには、駅を中心に周辺エリアのマーケット調査・分析をするが、数字では読み取れない街ごとの特性があり、それは自分で街を歩き街の人の声を聞いてみないとわからない。それは、陣内研究室が実践し続けていることそのものであると感じている。 あと10年、20年後に「この街に住んでみたい」「この街に住み続けたい」と思っていただけるように、街の人のライフスタイルに寄り沿ったプロジェクトであり続け、街と共に成長する駅、沿線づくりを目指していきたい。
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