no.082

構造設計の仕事
   

円酒 昂(2011年修了 佐々木睦朗ゼミ) 


 

 私は現在、小西泰孝建築構造設計に勤めています。今の事務所に勤めるきっかけは佐々木睦朗先生に就職相談をしたことでした。先生の勧めで先生の弟子にあたる小西さんの事務所へ2011年に入社し、今まで様々な物件に関わらせてもらえました。

 今回は、その中で「上州富岡駅」の話をしたいと思います。上州富岡駅は富岡製糸場の最寄り駅であり、富岡製糸場が世界遺産登録に向けて運動中という時期であり、3.11が起きてすぐの時期に実施されたコンペでした。そして、コンペのテーマの一つとして「富岡製糸場の最先端追求の気概を継承した構造デザインについて」という、構造の部分にも重きを置いた珍しいコンペでもありました。
 設計者のTNAと一緒に「レンガを座屈拘束に用いた鉄骨ブレース構造」を提案し、最優秀賞に選出されました。コンペを取ったのは良いのですが、提案したことはやらないといけません。そこからは、レンガや座屈拘束ブレースの勉強をして、試行錯誤を繰り返しながら進めることになりました。新しい試みでしたので、理論的には成立していても、やったことも見たこともないことはどうしても不安が募りました。そこで、実験しようということになり、上州富岡駅と同じ群馬県にある前橋工科大学の林貞夫先生にご協力いただき、実験をすることになりました。自分達で実験計画書を作成し、材料を発注し、実行するという稀有な経験をさせて貰え、構造の安全が確信できたと共にやってみればできるものだと感動したことを覚えています。
 施工でも、新しい試みであるため施工者との議論や改善を繰り返しながら、協力して施工することができました。レンガ職人の方に言われた言葉で、「レンガ造は壁を叩いたら音で強い構造かがわかる。この壁はとても鈍い音がするから絶対強い。最近こういうレンガ造は少ない。」と言われ、嬉しかった思い出があります。
そして、無事に駅舎は竣工することができ、富岡製糸場は世界遺産に登録され、いくつかの建築の賞も頂くことができました。

 最近は法政大学建築学科OBの方と一緒にお仕事させて貰う機会もあり、OBに協力できることも仕事の楽しみの一つになりました。最後に私は今年2017年の3月一杯で退社し、独立する予定です。もし、お仕事があればご相談下さい。

 

 
上州富岡駅 完成後写真
   
 
  上州富岡駅 座屈拘束レンガ圧縮試験実験風景
   
  上州富岡駅 鉄骨建て方風景
   
   
   
   
 
[プロフィール]    
えんしゅ のぼる    
円酒 昂 2011年修了 佐々木睦朗ゼミ

   
1987年 東京生まれ
2011年 大学院修了 佐々木睦朗研究室
2011年-2017年 小西泰孝建築構造設計
2017年- 円酒構造設計