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趣味というほどでもないが、数年前から「ヤフオク!」にはまっている。「ヤフオク!」はYahoo! JAPANが提供するインターネットオークションで、スマートフォンからでも簡単に入札・落札・決済が済ませられる。昔は「いたずら入札」や「悪質な出品」もあったが、仕組みが改善されて、安心してオークションが楽しめるようになった。 「ヤフオク!」では、興味のあるキーワードを検索項目に入れると、現在出品されている商品の写真や現在価格が一覧表示される。より詳しく知りたければ、出品者の評判、詳細な商品情報、取引情報まで見ることができる。気に入った商品を見つけ、予算価格を入れれば自動的に最小間隔で入札を繰り返してくれる。締切時間がくるまで、入札の経過、最終的な落札情報をメールでも適宜教えてくれる。また、ウォッチリストという機能があって、興味ある商品の入札の動きを監視することもできる。入札に参加しなくても充分楽しめる仕組みだ。 何故はじめたのか。きっかけは些細なことだったが、そのうちテーマを絞るようになった。私が生まれた頃は、北欧、特にデンマークのデザインの黄金期だった。この時代は、ヤコブセンやウェグナー、ポール・ヘニングセン、DANSKの創始者クイストゴー、カイ・ボイスン、モーエンセンと、家具作家をあげたらキリのない時代で、アーキテクトも建物だけでなく、雑貨や家具のデザインをしていた優雅な時代だ。自分と同じ年代を過ごしてきた品物に愛着があった。 特にチーク材の持つ、時を経てきた色、質感に魅力を感じた。デンマークは木が豊富な国と考えられがちだが、実は貴重で、番号管理されている。実際には、木材は東南アジアからの輸入が多い。初めは入札に参加するというより、見ているだけ。この時代にどんなデザイナーがいて、誰に人気があるのか。どんなものがあって、どのくらいの価格で売り買いされているか。これが良い勉強になる。 歴史や作家、材質を調べるようになって知識が広がってくると益々面白くなる。ビスの形状から年代が判り、フォルムによる人気の違いにも気づく。ここで知識が広がると、他のところで掘出し物を見つけることもできる。いつの間にかアンティークショップの店員よりも情報量が多くなっている。これは大変気分がいい。 同じ時代であってもデザイナー、素材によって作られるものは全く違う。片方はヤコブセンがステルトンから出したシリンダラインシリーズのステンレス製のアイスバケット。『二〇〇一年宇宙の旅』にも登場している。もう一方は、DANSKの創業者、イェンス・クイストガードのデザインしたチーク製のアイスバケット。こちらは日本の手桶からシルエットを採ったと言われている。二つを見比べてどちらが時代を超えて長く愛されるのかなど、酒を飲みながらの談義に花がさく。
入札のテクニック、人の心理状態、こちらも捨て難い魅力であるが、「人がどんなデザインを好むのか」、これは仕事にも充分活かせる。
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