no.101

ゼネコンで建築設備に関わること
2018年11月  

長崎 敦(1998年卒業 出口ゼミ) 


 大学を卒業して、ゼネコンに入社してからすでに20年という歳月が経った。

 入社以来、一貫して建築設備の現場施工管理に携わってきた。環境に恵まれたこともあり、これまで小さなものは個人邸から、大きなものは延床面積10万uを超えるような複合再開発等、規模も用途も様々な物件に携わることができた。

 現在は、日本橋をスマートシティにする『街づくり』に参画している。もはや建築設備という枠を出た領域のことに取り組んでいる。思えば大学卒業時の進路を決めるときにも将来的な自分のフィールドは、プラントエンジニアリングや広域エネルギーを扱う分野に関わりたいと思っていたので、この歳月をかけて、自分のイメージした領域で活動できていると思う。

 具体的には、日本橋地区に地域発電所とDHC(地域冷暖房施設)を建設した上で、そこから地域の既存建物に電気・熱を供給し、スマートシティ化する日本初の事業である。地域発電所とDHCは、大型再開発建造物の地下に構築し、インフラ供給ラインは既存の街区に作ることになるので、道路に大型のマンホールや地中管を埋設し、既存建物内を大改修してエネルギー供給用の配管やケーブルを通すことで、新たなインフラを地域に張り巡らすという内容である。

 昨今、世の中では省エネ(eco)・事業継続(BCP)が多く謳われているが、街づくりにも建築にもこのキーワードは必ず取り込まれる機運になっていて、私が現在手掛けているような事業も、今後は出続けるであろうことを感じている。そんな中で、都市型スマートシティを作る事業ではゼネコン設備技術者の手腕を発揮することが出来ると確信している。

 発電所やDHCのそれ自体は、かなり特殊な技術の集合体であり、設計的な作り込みの領域迄は手掛けられないが、我々の得意とするところとして、建造物に大型機械や大口径配管、大量なケーブルを取り込み、機能させる迄を成し遂げること、多くの関係者の中心となって、完成までの様々な検証や調整を行っていくこと等は、自分達にしか出来ない役割だと自負している。

 また、専門性の高いメーカーの技術者や研究者、プラント技術のプロの方々等、通常の建物を作る際には出会わないような人たちと関わることができることも、ありがたい機会だと思う。建物を作る(今回は街づくり)というプロジェクトの中心にならざるを得ないからこそ、これだけの人・場面・苦労・感動に遭遇できることもゼネコンならではの役得と思っている。

 振り返ると若い頃は大きな建造物に関わること、建築設備が機能することで建物が生きていることを実感できたことなどがやりがいになっていたが、今ではその枠を超えて、街づくりをしていることを思うと、ゼネコンの設備にも新しい領域が出来て、今後の設備技術者の新しい目標ややりがい、道筋が作れるように、常に革新的に、自分達のフィールドを広げていくことに楽しみたいと思う。

 

 

 
  ホテルユニバーサルポート(大阪)一番思い入れのある建物。
   
  プラントの配管は直径1m。柱より太い。
 
 
趣味で始めたトライアスロン。
   
   
 
[プロフィール]    
ながさき あつし    
長崎 敦 1998年卒業 出口ゼミ

   
1975年東京都生まれ。
1998年卒業(出口ゼミ)。
1998年 清水建設株式会社入社。
入社後、一貫して建築設備施工管理に携わる。
「本厄から始1まる肉体改造」をテーマに、トライアスロンにデビュー。泳ぐ・漕ぐ・走るにすっかりハマる。