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私は卒業以来、建築とは違うジャンルに身を置いております。卒業と同時に伝統工芸の専門学校へ入り、卒業後はNPO法人の活動に参加していました。今は、独立し、木の器やカトラリー等を作る木工作家をしております。 思い返せば、元々何かを作ることが好きだったので、大学では建築を選びました。ただ、デザインし図面を書くことは自分の作りたいという欲求とは少し違っていました。デザインを考えるのも好きでしたが、自分の手でモノを作りたい。その思いが強くあり、手仕事の極みの一つの伝統工芸の門を叩きました。専攻したのは木工芸。特に、指物と呼ばれる木組みの技術です。木造建築にも同じ木組みが使われています。力のバランスを考え、どこにどう組んでいくか、結構頭を悩ませます。図面を描いていると、大学で建築を、特に吉田ゼミで耐震・免震構造といった構造力学を学んでいたけれど、少しは活かせているのかなと思ったりしていました。ゼミでは、パソコン上でモデル解析をしてどうすれば理想の結果になるか計算を重ねていました。指物では、使うときのことを想定しどういう組み方にしたら使いやすくかつ長持ちするかを考えて形にしていきます。建築も指物も規模は違えども基本は同じ。いわば指物は小さな建築みたいなものです。 そうして、手仕事の業界に入ると技術だけでなく伝統工芸という業種の危うさも教わりました。よく言う後継者不足問題です。継ぐ若者が減少し、育成側も新しく人を雇えない。そういった流れで伝統工芸の専門学校も出来ましたが、卒業後の就職先も少なく、業界に残るのはごく一部。そこで、専門学校の先輩が自分達で何か出来ることはないかと立ち上げたNPO活動に参加することにしました。そこでは、若手作家の育成として作家達自らで展示会を企画し作品発表をし、また伝統工芸品の良さ、手仕事の品の良さを知ってもらうため、地域の子供達や親御さん向けに体験教室を開き、より身近に感じてもらおうと活動していました。その間は、中々自分の作品作りの時間が取れず、本末転倒に思うときもありましたが、幸いにも活動に参加してくれる後輩たちが増えてきたこともあり、三年程でそこを離れ、今は伝統工芸ではありませんが、より日常に溶け込み、毎日使っても飽きのこない普段使いの器を作りたいと思い、作家としてやっております。 たまに人から聞かれます。建築を学んでいたのになぜ今は木工をしているの?と。確かに、他人からしたら全然関連のない仕事をしているように見えるかもしれません。が、私としては、モノづくりという大きい枠の中で同じであり、作るモノが建築か器か、その違いでしかない。その中で私は、毎日手に取って使って貰いたい、そういうモノを作りたいから器を作っている。ただそれだけです。 そういう意味では、大学でモノづくりの最初の一歩を踏んだことになるのでしょうか。今のところ、この道をずっと歩んでいくつもりではいますが、多少道を変えたとしても、モノづくりの流れの中にはいるのだろうなと思います。
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