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木場の水澤工務店に勤めて10年になります。所属する設計部では法政の先輩や後輩と共に働いております。 隣の刻み場では、大工さんたちが下拵えをしているような環境です。学生の頃、和風物件を手掛ける当社に興味を持ち、大学のインターンの授業で来たのが始まりです。昨年は銀座の鮨店、最近ではお茶室の設計を担当する事が出来ました。 入社時、配属されたのは工事部施工図課でした。まずは勉強して来いと現場へ送り出されました。主な仕事は毎日の場内清掃です。清掃しながら、スケールをあてたり、職人さんに聞いた事をノートに取りためる日々。 そんな中で一番心に残った事は、建物を施主に引き渡す時の寂しい気持ちです。何ヶ月とそこへ通い、大切に育てた子供を送り出すような気持ちは、現場を経験したからこそ味わえたものでした。 設計部へ異動してから担当した四谷の養国寺様は、戦争で焼けてしまって以来、本堂が存在せず、再建をお手伝いさせて頂きました。建築好きな御住職と共に考えたRC打放しの本堂です。 綺麗な肌のコンクリートを目指し、打設時には私は特に天井の型枠を拭きあげました。伽藍配置から計画し、本堂・庫裏・方丈と順番に建築しております。自分にとって特別な場所です。 先日友人を連れ、お寺を訪れました。共に建築の世界を目指していたのですが、今では車の設計をしている友人です。各々が設計した車と建築を並べた写真を撮りました。 学生の頃応募した「新・木造の家」コンペが10周年を迎えるとの事で、昨年佐賀でちょっとした講演を頼まれました。林業家の方々の主催でしたので、私が木と関わる仕事をしている事を喜んで下さいました。困ったことがあればいつでも帰ってこいと言ってくださいます。第二の故郷が出来たような気持ちです。 3年前にマイホームを建てました。建築を志した頃から自分で設計するのが目標でしたので、夢が叶いました。 仕事とは違い、超ローコスト住宅です。色々とやりたい事があるので張り切って妻へ提案するのですが、なかなか首を縦には振ってくれません。ですが、実際に住んでみると、妻の意見の方が正しかったりします。建築を勉強してきた人にだけある価値観みたいなものが多少あるのでしょう。 建物を注文する施主も相当なパワーを使っている事がわかりました。また、違う工務店さんの仕事を見る事での発見もありました。 竣工後は大学の同期がお祝いに駆けつけてくれました。大江研の同期は家族連れで集まりました。小さいリビングに大人が11人、子供が7人、人で床が覆い尽くされましたが、嬉しい出来事でした。同期とは年に数回必ず顔を合わせます。素晴らしい仲間です。 現在5歳と1歳の二児の父です。「もう少し早く帰って来られないの」と家族に言われながら日々、奮闘しています。休日はDIYで自宅づくりの実験の日々です。入社時と生活の環境は変わりました。新しい出会いもありました。これからの10年も同僚や職人さんや友人達の刺激を受け、日々精進して参ります。 (記事の執筆は2017年7月時点)
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