no.107

ドイツの空にジャンボ鯉のぼり遊泳
(日独親善と文化交流会同行記)
2019年5月  

佐藤 良一(1979年修了 川口衞ゼミ) 


 深い緑の森と丘に囲まれた人口10万人の静かなドイツの町、カイザ−スラウテルン市に時ならぬ歓声が沸き起こった。100mのジャンボ鯉のぼりがドイツのこの静かな町の空に見事、遊泳に成功し、ドイツ子のど肝を抜いた。(2006年5月27日、28日 合計4回遊泳)

  この町は多くのドイツサッカ−代表選手を輩出しているドイツサッカ−界のメッカとも言える町で、2006年FIFAワールドカップドイツ大会のジーコ・ジャパン対オーストラリア戦の会場となる町でもある。またヨーロッパ随一の面積を持つ日本庭園(設計指導は建築家赤松邦彦氏 1965年法政大学建築学科卒業)も有し、市長をはじめ親日家も多い。
またこの市には巨大魚の伝説があり、町角のいたるところにこの伝説の巨大魚を型どった紋章(一般公募らしい)も道標のようにあり、巨大魚同士の競演である。(最終日は日本庭園で約2cm程度の「宇宙めだか」「日本めだか」の放流会もおこなわれた。)

 このイベントはワ−ルドカップドイツ大会開催に先だち、カイザ−スラウテルン市と赤松氏の提言により日独親善と文化交流・ワ−ルドカッププレイベントとして実現したものであり、埼玉県加須市(鯉のぼりの里)のこのジャンボ鯉のぼり(設計は川口衞法政大学名誉教授)が出展され、加須市商工会の人達約60名の手によってドイツの大空に遊泳したものである。

 このジャンボ鯉のぼりは毎年5月3日「加須市民平和際」に加須市利根川沿いで加須市商工会の人達の手によって遊泳されており、2〜3万人の観衆とともにNHKはじめ各放送局、新聞社も取材にかけつけてくれるほどの賑わいのあるイベントである。ハワイに引き続き2度目の海外出張であるが、3代目(3世と呼んでいる)のジャンボ鯉のぼりである。

 初代は650kg超の重さを持っていたが、3代目は350kg弱と重さも約半分に進化(木綿製のものから化繊のものへ)しているが大きさは変っていない。うろこの模様は小学生たちの手書きによるものである。ジャンボ旅客機の大きさが70〜80mくらいだそうだが、胴周りを比較してみても2周りも大きい。

 こんな巨大なものが日本の子供の日にあげる普通の鯉のぼりと素材(布地)も製法(縫い目)も全く同じで(姿形も全く相似)、大空に遊泳する様子や空気が抜けるときの尾っぽのはためきはまさにダイナミックで壮観である。

 普段鉄やコンクリ−ト等の固いものを扱っているイメ−ジのある建築構造家の手腕により実現されたことは驚嘆の一語につきる。さすがに科学立国のドイツ子たちである。絶対に何か仕掛けがあるのではとの目で見ていたようであるが、何の種も仕掛けもなく全く普通の大きさの鯉のぼりと同様に風だけで大空を遊泳するのである。

 朝から曇天で少々強めの風速10m/sくらいの風が吹いていたが、ちょうど遊泳の時間になると雲間から日も差すようになり、町のどこからでも良く見えたと多くの大人も子供も遊泳見学に集まってきてくれて、大空に遊泳するジャンボ鯉のぼりに見入っていた。また加須市からも子供たちに2000本のミニ鯉のぼりがプレゼントされ不足が出るほどの大人気であった。

 

 
  ジャンボ鯉のぼりの離着陸、巨大さがよくわかる
   
  カイザースラウテルンの町のどこからでも良く見えた
 
 
ドイツの新聞に大きく報道された
 

   
   
   
   
   
   
   
   
   
 
[プロフィール]    
さとう りょういち    
佐藤 良一 1979年修了 川口衞ゼミ

   
1951年 新潟県生まれ 
1979年 大学院修了(川口衞ゼミ)
1979〜1985年(株)日本技建にて鉄骨シェル(ゲビオン構造)の研究開発と設計
1985〜1996年(株)青研構造を経て、
1996年独立 佐藤良一構造事務所
現在 法政大学兼任講師