no.109

新任です
2019年7月  

新藤 智(2002年修了 後藤剛史ゼミ) 


 ようやく前期講義の成績入力が完了しました。妻からの矢継ぎ早の日程調整メールを鑑み、夏休みの予定を本格的に考えないと…。

  学生時代より慣れ親しんだ法政大学を離れ、2017年4月より西日本工業大学にお世話になることとなりました。本年創立50周年を迎えた本学は、数年ぶりに全学科にて募集定員の全てを充足し活気に満ちています。大学の住所は福岡県北九州市小倉北区となるのですが、所在を説明するのが悩ましいのです。福岡県の―ではちょっと広域すぎる、北九州市にある―にも違和感を覚えます。1963年に五つの市(小倉・門司・戸畑・八幡・若松)が合併して新設された北九州市は各地域で文化が異なるように感じます。やはり「小倉にある」と名乗りたいところで…、なんてことを書いてしまうと察しのいい旧知の方には「早速感化されたな」と思われることでしょう。ご明察です。それほどまでに住環境や職場に恵まれており大変有意義に過ごしております。

 こちらでの生活ですが、なによりもまず食べ物が新鮮で非常に美味しいです(特に魚)。ただし、九州の醤油にはなかなか慣れません。砂糖が添加されており甘みが強いのです。刺し身醤油はもちろんのこと煮物を始めありとあらゆる食べ物が非常に甘く、未だに口に入れる際に少しだけ身構えてしまいます。また、福岡県はうどん発祥の地を自称していることからも蕎麦を食べる機会が非常に少ないです。スーパーなどに行ってもうどんコーナーは充実しているのですが、蕎麦は隅っこにちょこんと追いやられています(あっ、山口名物の瓦蕎麦は見かけますね)。当面の課題は「激甘醤油の克服」と「美味しい蕎麦屋の探索」となっています。

 さて、本学の学生ですが普通科のみならず工業高校からの進学者もおりバラエティーに富んでいます。裏表が無く非常に素直、あまりに愚直過ぎて試験の際にも真正面からアタックを仕掛けては玉砕するものも多数です。学生の主眼は就職であり(含む保護者)、大学院は開設しているものの建築学科は進学者無しです。また、少々内気な学生が多く、大きな会社や東京・海外などに出て一旗揚げてやろうなんて者はほとんどおりません(これは地域性に拠る所も大きいです)。あれっ、大学の雰囲気にちょっと違和感が…。私が法政大学に入学したのは1991年、日本のみならず世界を代表する先生方のもと、学生たちの将来の夢や希望を心広く受け入れていただける寛容な環境で学びました。大学のあるべき姿とは学校や時代背景により様々であるとは思いますが、学生に勉学に励んでもらえるようにより良い環境を提供することに関しては共通であると思います。幸い私には法政大学建築学科という非常に恵まれた環境で学んだ経験があります。現状は先生方の後ろ姿すら視界に捉えることもできてはおりませんが、当時の経験を活かし、学生の可能性を少しでも広げられるように、またモチベーションを喚起・維持できるように精進して行こうと心に誓う着任一年目の新任教員っちゃ。

 

(記事は2017年8月時点に執筆されたものです)

 

 
  みんな大好き小倉城
   
  西日本工業大学小倉キャンパス
 

 

 
  設計はMichel Graves
   
   
   
   
   
   
   
 
[プロフィール]    
しんどう さとし    
新藤 智 2002年修了 後藤剛史ゼミ

   
1972年 神奈川県生まれ
2002年 博士後期課程修了(後藤剛史ゼミ)。博士(工学)
1996〜2014年 東京テクニカルカレッジ非常勤講師
2002〜16年 全日本建築士会講師、法政大学兼任講師
2014〜16年 (株)ジエス
2017年〜 西日本工業大学建築学科准教授