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今までを振り返ると「博物館」という公共建築の設計に携わる機会が多い。1つのプロジェクト期間がプロポーザルから開館まで5~6年であることを考えると、ほぼ途切れることなく設計や監理・展示工事調整など、何かしら博物館整備に関わっていることになる。
それぞれの博物館には背景や役割もあり一概には言えないが、近年博物館の位置づけが多様化してきていると感じる。最初に担当した「いのちのたび博物館」は学芸員による調査研究や各種講座開催といった学びの場と集客を目的としたアミューズメント性の高い展示という特徴を持つ。2つ目の「九州歴史資料館」は、埋蔵文化財センター機能が強く、博物館機能は研究成果の展示や講演が主となる。つまり、2つの博物館ともに学芸員が主体となって運用し、興味のある人々が集まる場所となっている。それが、2013年に計画を始めた「大野城心のふるさと館」になると、市民交流のきっかけとして博物館を活用するという位置づけになる。さらに、現在建設中である「松本市立博物館」も重要文化財を保有し研究が活発な博物館であるが、今回の整備に際して市民交流の比重が大きくなっている。すなわち、調査研究・収蔵・展示・教育普及という学芸員主体の博物館要素のほかに、市民が自ら運営に参画する機会が増えている。これは、地方行政が新しくつくる建築を核として「まちづくり」を行おうとしていることの表れであり、図書館やホールなどにもこの傾向がみられると思っている。
まちの活性化につながる建築の設計ということは、どういうプロセスを踏んでいくことが良いのか試行錯誤している。今までも設計を行っていく中で、人々が訪れやすく、活動をしやすい多様性に富んだ場をつくることに心がけているが、実際にその場を使うことによって活動や情報が媒介となり、まちに「にぎわい」が広がっているという実感はうすい。 このように考えると、不特定多数のひとが訪れる場をつくることは、どのように運営していくか企画し、さらにはオープン以降も運営をサポートしていくことが理想的な形ではないかと思う。つまりはこの仕組みづくりが重要であり、与条件づくりからユーザーと一緒なって行っていくことが必要である。今までもワークショップなどでエンドユーザーとつくりあげていくことはあったが、オープン以降も運営に関わった経験はない。現状では設計業務として、このようなことまで契約していくことはハードルが高い。しかし、建築の設計が建物をつくることだけではなく、トータルで環境をつくることであると改めて強く感じているいま、様々な状況の中で、これからどのようなスタンスで設計に取り組んでいくかを考えている。
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