no.131

わたしの働く場所
2021年5月  

白井 深雪(1994年卒業 陣内ゼミ) 


 「一級建築士がなんでこんな所で働いているの?!」たまに言われる言葉です。私は、静岡県中西部にある藤枝市のビジネス支援窓口「エフドア」を運営しています。

  8年ほど前、長く手伝ってきた建設関連の会社を両親がたたみ、私は自由に仕事を選べるようになりました。早速、県内各地の都市計画を手掛ける事務所に入りました。好きな仕事ができる!と思っていざ入ると、与えられた仕事は「地域経済活性化」のプロジェクト。社内でも初めて取り組む事業です。

 「エフドア」での主な仕事は、地元の中小企業の経営力の底上げと、起業を促進し元気なまちをつくること。世の中で必要とされることをリサーチし、地域の需要とマッチングさせ、セミナーを企画開催したり、専門家と共に個別相談を行ったりして、困っていることを一緒に解決していきます。確かに建築の仕事とは全く関係ない世界…。

 この仕事の醍醐味は、数多くの相談の中で時々「これは!」という、きらりと光るビジネスのタネと出会うことです。自分の得意なことを活かし信念を持って働きたいという人たちと出会い、その人たちの背中を押し、羽ばたいていく後ろ姿を見守る。そんな繰り返しにとても喜びを感じます。実は今思えば私にもそういうチャンスがありました。資格を取ってすぐ、社内に設計事務所を開いてもらいました。当時の私は何一つ分かっていないただの世間知らずで、案の定、何一つ成すことなく会社の廃業とともに消えてなくなりました。いま、夢の実現に向かって勝負していこうという人たちと接しながら、当時の自分を残念に思います。

 この仕事は「モノづくり」とは全く違う分野ですが、共通するものをいくつも感じます。例えば家を建てる時、主役は設計者でも施工者でもありません。主役はそこに住まう人たちです。どんなことに価値を感じ、どんなものに囲まれて暮らしたいか、どんな人生を送りたいか…。その想いに寄り添い、夢を実現するために自分のもつ知識やスキル、人脈を駆使してサポートする。出来上がるものは違っても、今自分がしていることは全く同じことだと思っています。

 だから建築の仕事をしたい気持ちは持ち続けていても、今の仕事も同じように楽しくやりがいのある仕事で、私の働く場所なのです。

 


職場は「藤枝市産学官連携推進センター」内にあります
 
デザイナーと共に商品パッケージを考えるのもワクワクする仕事の一つです
 
 
 
 
 
 
 
 
[プロフィール]    
     
白井 深雪
(旧姓:斉藤)
1994年卒業 陣内ゼミ

   
2012年4月から 樺n域まちづくり研究所(静岡市葵区)勤務
藤枝市の「EG(エコノミックガーデニング)支援センター エフドア」の設立から関わり、現在9年目を迎える
大学生から小学生までの2男1女の子育て中で、小学校の交通安全の旗振りは通算13年目のベテランです