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法政大学大学院を卒業して、二年半が経ち、小堀哲夫建築設計事務所に入ってすぐに担当させてもらった福井県あわら温泉のべにや旅館が今年の7月に竣工、オープンとなりました。当たり前のことかもしれませんが、べにやさんの建築を担当することを通して建築は人のつながりの中でできているということを学ぶことができました。
べにや旅館の再建は建物が火災で全焼してしまってから、社長、女将の記憶と焼けずに残った庭を頼りに設計がスタートしていました。設計の中ではワークショップが行われ、そこには地域のお蕎麦屋さんやあわらの旅館の女将も参加し、べにやさんの建築、あわら温泉の街としての魅力、これからのあわらの未来についてのディスカッションが行われました。
そこでキーワードとなっていったのが「テリトーリオ」※という言葉でした。法政で学び、陣内秀信先生の授業を受け、町歩きに参加していた私にとっては、馴染みのある言葉でしたが、女将たちと小堀事務所の私たちがテリトーリオと言う言葉で未来のイメージを共有できているということがとても嬉しく、テリトーリオの実践としての大事なプロジェクトとなりました。実際に陣内先生の瀬戸内のテリトーリオツアーにべにやさんと一緒に参加し、テリトーリオの実践をされている瀬戸内の方々のお話を聞くこともできました。
女将さんから、昔お客さんに「旅館というのは美術館です」と言われたことがあるというお話を伺いました。旅館というのは大工さんの技術、建具屋さんの技術、和紙屋さん、家具屋さん、数えきれない人の技術が泊まりに来られる人々を感動させるために集まるハコなのです。効率や利益を求めるところからは削ぎ落とされてしまうところにテリトーリオの概念はあり、技術や文化を守っていこうという女将の思いと地域の人のつながりを感じることができる旅館という建築のあり方はとても大事なものだと感じました。こういった考え方をこれから建築を考えていく上でも大事にしていきたいと思います。
合言葉はテリトーリオです!と笑顔でチームに呼びかけてくれた女将がいる「光風湯圃べにや」に是非お泊まりいただき、「テリトーリオ」を感じていただければと思います。
※テリトーリオ・・・都市とその後背地にある田園、そこでの暮らし、営み、建築資産、文化などを総合的に見て、再評価しようという意図で使われている言葉(陣内秀信氏/city
& life no.116生態的都市 可能性としてのテリトーリオ 対談より)
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