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社会にでて建築の仕事をするようになってから、約10年が過ぎた。
法政大学で学部時代の4年間を過ごした後、より社会や都市に接続した視座を求め、卒業後は横浜国立大学大学院Y-GSAに進んだ。私が社会人1年目として組織設計事務所に入社したのは、2011年のことだった。 一般的に建築設計業務の原則においては、場所、用途、規模といった与条件をクライアントが提示し、国で定めた設計業務の定義と報酬基準から、平面図、断面図といった最低限の成果品が定められている。与条件をカタチにするのが建築設計者の主な役割であるが、先に述べた大きな転換期を迎える今、「そもそも与えられた条件をもとに建築を設計することだけが、建築家の果たす役割なのだろうか?」という問いは年々強くなっている。この数年、プロジェクトそれぞれが抱える困難かつ複雑な課題に対し、設計図面だけではない独自のアウトプットと業務仕様の提案を以て、課題解決に取り組んできたように思う。 ときにそれは、最盛期の1/4まで観光客数が減少した老舗観光地において、老朽化した公共施設群の整備優先順位をつける目的に対し、耐用年数判定や災害危険度を中心としたハード評価に、観光客の利用実態や満足度といったソフト評価を加えた多角的な指標で評価し、あるべき観光再生ビジョンをマーケティング観点も取り入れ考えることであった。(図1) またあるときは、多勢のステークホルダーが関わる都心再開発ビル内のバスターミナルにおいて、「東京駅前に相応しい」施設とすべく、公共交通施設としてあるべき内装デザインの提案に加え、付帯するサイン、サイネージ、什器といった関連工事のデザインガイドラインと検討スキームを提案し、トータルデザインマネジメントを実施することであった。(図2)
これらはほんの一部に過ぎないが、クライアントが抱える事業課題、地域課題、社会課題といった「モヤモヤ」の段階からみつめ寄り添い、その解決手法として「建築設計」に留まらない幅広いデザイン手法からアウトプットを提示する役割が、低成長・成熟社会を生きる時代の建築家として、一つの姿になればと思っている。
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