no.146

なぜ島で農業をしているのか
2022年8月  

福地 昂弥(2020年修了 高村雅彦ゼミ) 


  私は今、瀬戸内海の豊島で暮らしています。離島ですので当然田舎ですが、高松へは35分、大阪は3時間、Amazonで大抵のものは手に入るので、意外と快適です。虫やイノシシに慣れるまでは大変ですが(笑)。

 で、何をしてるの?とよく聞かれますが、基本的には農業をしています。といっても農家になった訳ではなく、あくまで豊島美術館の一職員です。
 訪れたことのある方はご存知かもしれませんが豊島美術館は棚田の中にあります。ですので建築と景観の融合は必須。草刈りでの景観維持はもちろん、稲作や野菜栽培なども大切な仕事です。「建築の一部をつくってる」くらいの気持ちで、今は夏野菜をつくっています。
 では、美術館のために活動しているのかと言うと少し違う。建築やアートのためだけに力を入れていても、きっと地域には受け入れてもらえないでしょう。

 豊島美術館は2010年に完成しましたが、同時に行われた事業が棚田の再生でした。豊島は、かつては農業や酪農で2000人程が自給自足していた、名前の通り豊かな島です。しかし他の地域同様、日本の経済成長とともに第一次産業が衰退し、大規模な産業廃棄物問題も発生しました。現在は700人近くまで人口は減少していますが、今でも島民の方の多くは農業を続けており、島の文化を守ろうとされています。
 私たちができることは、あくまで島の人々が主体とした活動のサポート。島の代表的な景観の一つである棚田を再生し、豊島美術館や棚田がその象徴になってほしい。地域に対する誇りを少しでも取り戻してほしい。そういった思いのもと、今も活動を続けています。
 今年は瀬戸内国際芸術祭も行われています。来て頂いた方に満足してもらえることも大切ですが、受け入れる側も、来られて良かった、芸術祭があって良かったと思ってもらえるように。

 僕は豊島にいつまでいるか分かりません。ただこの地域に関わり続けたいと、そして世界に誇れる地域をつくっていきたいと思いますので、ぜひ遊びに来ていただけると嬉しいです!


棚田の中の豊島美術館
 
棚田の再生活動の様子
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
[プロフィール]    
ふくち たかや    
福地 昂弥 2020年修了 高村雅彦ゼミ 

   
1995 大阪府大阪市生まれ
2018 法政大学デザイン工学部建築学科卒業 陣内ゼミ
2020 法政大学デザイン工学研究科建築学専攻修了 高村ゼミ
2020- 公益財団法人福武財団