no.164

やりたいことを考えてみたら
2024年2月  

平田 晶(2001年 渡辺ゼミ修了) 


乗馬が趣味になっている。

 数はようやく60鞍目を数えるまでになった。
そもそも乗馬を初めるきっかけはファイナンシャルプランナーに資産形成を相談したことだった。

「これからの人生設計の中でやりたいことはありますか?」と聞かれた時に、忙しい日常に流されてそんなことをじっくりと考えたことがなかったのですぐに返答ができなかった。初めてじっくりと「何がやりたいんだろ?」と自問する機会を得て、思い出した。乗馬は幼い頃に体験して以来、ずっと心の奥の片隅でやりたいと思っていたと。大学に入学当初、サークル選びで馬術部に惹かれて話を聞きに行ったものの、当時建築学科は、2年目以降は小金井校舎。建築学科は課題が多く忙しいから多摩校舎の馬術部に通いきれるかな、、なんて考えたりしてなんとなく諦めたこともよぎった。これからの人生の中でやりたいことは乗馬。そこで早速乗馬クラブ選びを始めた。自宅から通いやすくて、料金ができるだけ手頃であること、あまり敷居の高い感じがしない気軽な雰囲気であることなどの視点で自宅周辺にある乗馬クラブに片っ端から体験乗馬を申し込み、ようやく巡り合うことができた。

そこはクラブハウスや厩は古く、時間の経過を感じさせる味わいのある佇まいだった。元々が牧場のようで長閑な丘陵地の中にある。馬場の周りには畑が広がり、そこで収穫した野菜が時々利用者に振る舞われるという。

今は月に2回ほど通っているが目標は浜辺を疾走すること。早くそこまでのレベルに達したいと気持ちは、はやるけれど駈歩した馬を冷静にコントロールすることが大切だからと先生から宥められ、地道に基礎力を養っている。また、人生の趣味にしていきたいと思っているので自分のペースでじっくり身につけるのも良いのかもしれない、とも考える。

商業施設の共用部のデザインという仕事に長く携わってきているためか、休日でも街を歩くと無意識に目線は店舗のファサードデザインの感度や施設内の動線計画、照明効果、商品の見せ方やサインの分かりやすさ、などへと向く。好きだし楽しいけれど、長閑な緑の中での乗馬体験は日常生活と仕事が切れ目なく繋がっている状況がリセットされる感覚になれる。「これからの人生設計の中でやりたいことはありますか?」あの時、聞いてもらって本当に良かった。


 

蔵のある懐かしい雰囲気の乗馬クラブ
厩舎の風景
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
[プロフィール]    
     
平田 晶 2001年修了 渡辺ゼミ

   
1976年 東京都出身
2001年 法政大学工学研究科建設工学専攻 修了
2004年 株式会社船場入社 現在に至る