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日本が揺れるちょうど一年前、2010年、白髪のおじいさんが言い放った。
「結局のところ、継続するのか、変化させるのか、それだけだ。」
おじいさんの名前は、カール。 カールラガーフェルド伯。
こいつはデザインに対する至言ですよ。 そうなのよ。そういうことなんだよ。 と猛烈に膝を打った。
「とすると、継続又は変化の指標となるこれまでってなんだ?」 デザイナーの個人史では無いよな。 目の前にある建物なのか?
それとも、昭和の建物? 江戸時代? 鎌倉? ・・・ ・・ ・ 縄文!!!???
いやいや、ギョベクリ・テペは紀元前1万年。 当のカールおじさんの部屋は、 世界中のファッションや美術の本で溢れかえっている。
とにかく溢れているという言葉が本当に適切。 整理なんて一ミリも考えていないと思う。
デザインソース自体の歴史的な時系列に意味はないのかもしれない。 過去の建築を発展の歴史と捉えるのは歴史学者の発想だ。
我々設計は所詮実用、実践してなんぼ。 そんな小難しいこと言わずに、 時系列なぞ無視して網羅的に、辞書的に過去を観ればいいのでは。
そもそも、つながりを断ち新たに発想しようとする鮮烈な態度は、 私のような小設計者には、荷が重すぎます。
それは才のある方、芸術の方にお任せして。
それ以来、とにかく、いろんなものをいちど口に入れてみた。 生まれたての赤ん坊のように。
建築を始めた頃、誰しもがそうであったように。 多少お腹を壊すそうとも、それもご愛嬌と貪った。
太田邦夫先生の【工匠たちの技と知恵】に、その味わい方に大きな示唆をいただいた。 昔の人は、素直ですね。そう本当に素直。羨ましい。
無我夢中で集めたネタを前に、さて私はどうしたものかと途方に暮れていたとき、 卒業設計に悩みに悩む私を見かねて崔先生が授けてくれた言葉が蘇る。
「キミは連続性と非連続性の間をやりなさい。」
十数年近く経ち、いまごろやっと自分の設計方法が朧げにみえてきた。
蓄積された過去を飽きることなく漁り、仕事を通して出会った方々から、変わらぬ価値観と最新の感性を授かり、スルッと形にして処方する。
先日、近くの禅寺で目にしたお札にこう書いてあった。 「これまではこれからが決める」
これまでを活かす設計ができたら素敵なことこの上ない。 デザインに限らず生き方もそうなのかと、以来座右の銘とさせていただいた。
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眩いカール・ラガーフェルドの作品、この写真の切り抜き10年以上事務所に飾ってある。
2010年のファッションショーの演出は今も鮮烈。
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アレキサンダー・マックイーン、悔しくて涙が出る。
作品集の切り抜きだが、いつの日か実物をトルソーに着せて飾りたい。
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